公開日:2026年3月5日

製品・サービスのライフサイクル全体での温室効果ガス排出量を指す「カーボンフットプリント」。脱炭素社会の実現に向けて、環境政策にとどまらず経済政策の観点からも 国内外で注目が高まっています。カーボンフットプリントの基本概念と導入が広がる背景、具体的な算定・表示方法について解説します。

カーボンフットプリントとは?

カーボンフットプリント(CFP: Carbon Footprint of Product)とは、原材料の調達から生産・加工、流通、使用、廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体に おける温室効果ガス(GHG)の総排出量をCO2に換算した値のことを指します。製品・サービス単位で計算され、CO2相当量を意味するCO2eで表示されます。 例えば紙パック牛乳であれば、乳牛の飼育や容器の生産、牛乳の製造・包装、輸送、消費、紙パックのリサイクルのすべての範囲を対象とした排出量となります。


カーボンフットプリントの重要性

カーボンフットプリントは、企業のGHG排出削減の取り組みを進め、顧客・消費者に対し排出量の低い製品・サービスを選択する上での基準を提供するものとして期待されています。 また近年では取引先からの要請や政府の産業政策としての重要性も高まっています。

企業・組織の効果的な排出削減

製品・サービスのライフサイクル全体を通じて算定することで、サプライチェーンのどこに環境負荷が高いプロセスが潜んでいるかを客観的な数値として特定できます。 一連の過程で大小様々な排出源がある中、排出量の多い個所に対して優先的に対策を講じることで、企業・組織は、効果的な排出削減につなげることが可能です。

顧客・消費者の購買行動の促進

カーボンフットプリントの表示を通じて、製品・サービスの環境価値を顧客や消費者に対し可視化することができます。消費者庁の「令和6年度消費者意識基本調査 」では、 「どの商品が環境に配慮されているか分からない」が環境配慮型の商品を購入しない最も大きな要因となっており、排出量の少ない製品・サービスの選択を促すことが期待されます。

取引先からの要請・調達要件への組み込み

サプライチェーン全体の排出量の把握と削減に取り組む取引先から、製品別のカーボンフットプリントに関わるデータ提出や排出削減を求められるケースが増えています。 また調達要件に組み込む動きもあり、日本の政府調達ではグリーン購入法*の一部の対象製品の評価指標にカーボンフットプリントの算定・開示が設定されています。

*国等の公的機関が、環境負荷の小さい製品を優先的に調達することを定めた法律。政府調達の基準を示すことで、市場全体を環境配慮型へと誘導する役割を持つ。

自国産製品の国際競争力を高める産業政策としての重要性

エネルギーの安定供給・経済成長・排出削減の同時実現を目指す日本政府のグリーントランスフォーメーション(GX)推進において、カーボンフットプリントを脱炭素と産業競争力強化の実現のための価値指標として活用するための検討が行われています。具体的には、排出量を見える化し、低炭素製品が選ばれる市場環境を 創出することで、企業競争力につなげることを目指しています。またEUバッテリー規則*では、カーボンフットプリント算定の義務化が予定されています。算定基準において、 業界の平均値である2次データよりも取引先から直接取得する実測値などの1次データの利用を優先する設計とすることで、EU域内からの調達に切り替えるインセンティブともしています。

*EUバッテリー規則:2050年までの温室効果ガス排出ネットゼロに向け、EU内で販売される電池のライフサイクル全体での環境負荷低減と循環性向上を目的とした規制

カーボンフットプリントの算定方法

カーボンフットプリント算定の国際的な基準としては、製品のカーボンフットプリントに関するISO 14067:2018やGHG Protocol Product Standardがあります。また日本では2023年に経済産業省・環境省が国際基準を踏まえた「カーボンフットプリント ガイドライン 」を公表しています。

「カーボンフットプリント ガイドライン」に基づく、算定の基本的な段階は以下の通りです。

1. ライフサイクルフロー図の作成、算定対象の明確化

ライフサイクルの段階ごとに、算定対象となるすべてのプロセス(モノ・工程)をライフサイクルフロー図に記載する。

2. 算定のためのデータ収集

排出量はモノや工程ごとの「活動量×排出係数(排出量の単位)」で計算する。活動量は実測値や配分したデータを基本とする。ただしデータの入手が困難な場合には、標準的と推定される前提を与える「シナリオ」や算定の対象外とする「カットオフ」を活用する。

3. 算定ツールによる算出

表計算ソフトなどの算定ツールを利用して、カーボンフットプリントを算出する。

4. 算定結果・算定情報の表示

カーボンフットプリントの算定結果と算定のための情報を表示し、それらの情報をまとめた算定報告書を作成する。
(環境省「CFP入門ガイド 」を基に編集)

カーボンフットプリント表示における注意点

カーボンフットプリントは、消費者が企業のGHG削減努力を評価し、製品・サービスを選択するためのツールとなります。適切な表示を促すため、2025年に環境省が「カーボンフットプリント表示ガイド 」を公表しています。

カーボンフットプリント表示の基本原則は以下の通りです。

原則 詳細
信頼性・信用性 信頼できる算定方法により、信用できる情報を提供する。
技術的な信頼性を維持しつつ、適応性、実用性、費用対効果に留意する。

・適応性:算定結果に影響を与える要因の変化にあわせて、柔軟に数値や表示の見直しを行えること
・実用性:実務の観点で算定・表示が現実的であること
・費用対効果:算定・表示に係る費用とその表示による効果のバランス
ライフサイクル 製品・サービスのライフサイクルのすべての段階を考慮する。
比較可能性 将来的に同じ製品・サービス群で、同じ機能または宣言単位(製品1個や製品1kgあたりなどの個数や量ごとの単位)を持つ製品・サービスの比較を可能にすることを目指す。
透明性 定量的な情報、説明文により、表示している値がどのように算定されたかという情報を確認することができる。
地域性 生産・使用・廃棄が行われる場所によって値が変わる可能性があることを考慮する。

(環境省「カーボンフットプリント表示ガイド 」を基に作成)



算定対象がライフサイクルの一部のみ、算定・表示の前提が未記載といった算定・表示は、消費者に誤認・誤解を与える「グリーンウォッシュ」と指摘されるリスクがあり、注意が必要です。

カーボンフットプリント算定の課題

カーボンフットプリントを正確に算定するには、1次データの取得が不可欠です。しかし現実的には、複雑なサプライチェーンを上流まで遡ってデータ収集を行うことには難しさが伴います。その原因のひとつとして、各社で算定方法が異なっていたり、企業間でデータを共有するための標準的なフォーマットが存在しないことが挙げられます。また、こうした膨大なデータを手作業で集計することは困難であり、算定やデータ連携を効率的に行うためのシステムやツールの導入も欠かせません。

こうした「算定ルールのばらつき」や「企業間のデータ流通」といった課題の解決に向けた動きの1つに、WBCSD (持続可能な開発のための世界経済人会議)のPACT(Partnership of Carbon Transparency)が策定した 「Pathfinder Framework」があります。これはサプライチェーンを越えて1次データをやり取りするための共通ガイダンスです。これに連携する形で、 物流業界であればSmart Freight Centreによる「End-to-End GHG Reporting Guidance」といった、業界の実態に合わせた指針も定められつつあり、システムを介した効率的なデータ収集の基盤が整い始めています。

カーボンフットプリントは、2050年のカーボンニュートラルを達成し、環境価値の指標として製品競争力を高める上でも重要です。 カーボンフットプリント算定に対する注目が高まり、算定や表示に関わるルールの整備が進む中、企業は自社の製品・サービスの算定に取り組み、 排出削減と訴求に向けた取り組みを進めていくことが期待されます。

SustainaLinkを通じてできること

SustainaLinkでは、物流領域のGHG排出量可視化サービスを提供しています。カーボンフットプリントの算定に必要な、物流領域におけるGHG排出量の把握と、排出削減に向けた物流改善に貢献します。煩雑な計算を効率的に行うことができ、製品・サービス単位の排出量算定に関する物流業界向けガイドラインであるGLEC Frameworkや国際規格ISO14083:2023にも準拠しています。物流におけるGHG排出量の算定と削減を検討中の企業さまは、ぜひご相談ください。

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