公開日:2026年1月9日

企業が温室効果ガス(GHG)排出量を削減する上では、自社の製品・サービスの製造・提供工程だけでなく、その前後の原料調達から製品の使用、廃棄までのサプライチェーン全体での取り組みが欠かせません。 2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、企業はScope3(スコープ3)と呼ばれるサプライチェーン全体での排出量の把握・算定・削減の取り組みを進めていくことが求められています。

Scope3とは?

サプライチェーン全体でのGHG排出量(サプライチェーン排出量)は、Scope1,2,3で構成されます。 企業が化石燃料の燃焼や工業プロセスによって自ら直接排出するのがScope1、他社から供給された電気や熱・蒸気といったエネルギー起源の使用に伴う間接排出がScope2です。

それ以外のサプライチェーンの上流から下流までのすべての間接排出を含めたものがScope3です。Scope3は上流での原材料の調達や輸送・配送、自社従業員の出張や通勤、下流での製品の加工や使用、廃棄などを含む15のカテゴリに分かれています。

Scope3の15カテゴリの詳細

Scope3は全部で15のカテゴリに区分されます。

カテゴリ 概要
1.購入した製品・サービス 原材料や部品、容器包装、消耗品の製造に伴う排出
2.資本財 生産設備など自社の資本財の建設や製造に伴う排出
3.Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動 採掘や精錬といった調達している燃料や電力の上流工程に伴う排出
4.輸送、配送(上流) サプライヤーから自社への物流や自社が荷主の物流に伴う排出
5.事業から出る廃棄物 自社で発生した廃棄物の輸送や処理に伴う排出
6.出張 従業員の出張に伴う排出
7.従業員の通勤 従業員の通勤のための移動に伴う排出
8.リース資産(上流) 自社が貸借しているリース資産の稼働に伴う排出
9.輸送、配送(下流) 自社が販売した製品の最終消費者までの物流に伴う排出
10.販売した製品の加工 事業者による中間製品の加工に伴う排出
11.販売した製品の使用 使用者による製品・サービスの使用に伴う排出
12.販売した製品の廃棄 使用者による製品の廃棄時の輸送・処理に伴う排出
13.リース資産(下流) 自社が賃貸事業者として保有し、他社に貸与しているリース資産の稼働に伴う排出
14.フランチャイズ フランチャイズ加盟者のScope1、2に該当する排出
15.投資 株式や債券投資、プロジェクトファイナンスの運用に伴う排出

Scope3算定が必要な理由

企業のScope3排出量への注目が高まっている背景として、以下のような点が挙げられます。

  • ホットスポットの特定
    サプライチェーン全体を見渡して、排出量の多い領域(ホットスポット)を特定することで、 優先的に取り組む対象を特定し、効果的な削減対策を進めることができます。

  • 取引先や顧客からの要請
    サプライチェーン排出量の把握に取り組む取引先や顧客からの要請に応えることができます。 また情報共有を通じて、企業間の新たな連携も期待されます。

  • 開示義務への対応
    2027年3月期からプライム上場企業に順次適用される サステナビリティ情報開示基準(SSBJ) では、GHG排出量の開示が義務化されます。開示の対象にはScope3も含まれ、 SSBJの適用対象となっていないサプライチェーンに連なる企業にも開示要請が広がっていくこととなります。 またEUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)においてもScope3の開示が要請されています。

Scope3排出量の算定方法

Scope3を含むサプライチェーン排出量の算定にあたっては、GHGプロトコルが国際的な算定基準として使用されています。 日本国内では環境省が2025年3月にGHGプロトコルを参照した 「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン Ver.2.7」を発行しています。

Scope3の算定は、大きく4つのステップで進めていきます。

1. 算定目的の設定
算定目的を明確にすることで、算定の範囲や精度を決めることができます。サプライチェーン排出量の全体像の把握、サプライチェーン排出量における削減箇所の特定、SBTの認定取得、といった目的が考えられます。

2. 算定対象範囲の確認
サプライチェーン排出量の算定は、自社だけではなくグループ会社も含めた単位での算定が必要です。また時間的範囲は、通勤や出張といった自社の活動からの排出は算定対象時期の実際の排出量となります。 一方、原材料の生産や購入した製品・サービスの製造、販売した製品の加工・使用・廃棄といった上流・下流の排出量においては算定対象とする報告年度だけでなく過去や将来の排出量の推計を含むものもあります。

3. 活動のScope3のカテゴリへの分類
サプライチェーンにおける各活動を、カテゴリ1~15に分類します。

4. 各カテゴリの算定
算定目的を考慮し、算定方針を決定します。データ収集項目を整理して、算定に必要なデータを収集し、「活動量x排出原単位」の基本式に当てはめ排出量を算定します。

参照:環境省「 サプライチェーン排出量算定の考え方(パンフレット)」

物流に関わる排出量の算定

調達・出荷・廃棄に伴う物流に関わる排出量は、Scope3の複数のカテゴリにまたがるため、注意が必要です。またグループ内に輸送会社を有する場合や自社トラックで輸送を行う場合には、 Scope3ではなく自社のScope1、2に含まれる可能性があります。これらを除いた、外部委託の輸送について以下の通り分類します。



  • 調達に関わる物流:
    原則としてカテゴリ4「輸送、配送(上流)」に該当します。 ただし例外として、燃料そのものの調達に関わる輸送は カテゴリ3「Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動」となります。

  • 出荷に関わる物流:
    自社が荷主で他社に委託している場合はカテゴリ4「輸送、配送(上流)」に該当します。 他社が荷主の場合や、その後の倉庫保管・販売に関わる物流は、 カテゴリ9「輸送、配送(下流)」に該当します。

  • 廃棄に関わる物流:
    事業活動に伴う廃棄物の輸送は、カテゴリ5「事業から出る廃棄物」に該当します。

1次データでの排出量算定の現状と課題

Scope3排出量は「活動量x排出原単位」での計算が一般的です。しかしこの方法では、サプライヤーの排出削減努力が反映されません。 そのため近年ではサプライヤーから直接入手する1次データの活用が推奨されています。国内外で算定方法のルール整備が進んでおり、 環境省は2025年3月に「 1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」を公表しています。

実際に1次データを活用していくためには、精緻なデータの収集に向けた取り組みが課題の一つとなります。 三井倉庫グループではその一環として、トラックの走行情報や燃料消費量などの1次データを用いたルート毎のCO2排出量算定の 実証実験を実施しました。

SustainaLinkを通じて
Scope3排出量の算定を

企業がScope3排出量を把握し削減に取り組むことは、環境面だけでなく経済・リスク面からのサプライチェーン管理にもつながり、企業経営の観点からも重要です。 特に物流領域においては、Scope3の把握を通じて、算定企業がサプライチェーン上の課題を特定し、物流効率化をはじめとする物流改革へとつなげていくことが期待されます。 SustainaLinkは、三井倉庫グループが提供するGHG排出量可視化サービスです。Scope3の算定に必要な物流領域におけるGHG排出量の把握と、排出削減に向けた物流改善に貢献します。 製品・サービス単位の排出量算定に関する物流業界向けガイドラインであるGLEC Frameworkや国際規格ISO14083:2023にも準拠しているため、高品質な算定を行うことができるほか、 国際輸送に関するGHG排出量の算定にも対応可能です。物流におけるGHG排出量の算定と削減を検討中の企業さまは、ぜひ三井倉庫グループまでご相談ください。

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