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危険物を国際輸送する際に
知っておくべき基礎知識

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  • 海上輸送
  • 航空輸送
国際輸送のルールを包括的に定めた「危険物輸送に関する勧告」
国際海事機関(IMO)と国際民間航空機関(ICAO)
危険物輸送における3つのポイント

危険物を国際輸送する場合、安全上の理由から危険物自体の取り扱いや梱包・輸送方法に関する細かなルールを守らなくてはなりません。そのため、危険物の輸送を検討される際は、こういったルールに関する基礎的な知識や取り扱いにおけるポイントをおさえておくと大変役に立ちます。そこで今回は、危険物の国際輸送において知っておくべき基本的な知識や取り扱いにおけるポイントについて解説します。

国際輸送のルールを包括的に定めた「危険物輸送に関する勧告」

経済のグローバル化を背景に、国境を越えたモノの行き来が増える中、貿易に関する国際ルールの存在は不可欠です。特に、危険物の輸送においては、その取り扱いや規制が国ごとに異なる場合、安全性の観点で重要な問題が発生する可能性があります。

こういった課題へ対応するため、国際連合経済社会理事会の専門委員会である危険物輸送及び分類調和専門委員会は、1956年に「危険物輸送に関する勧告(通称、オレンジブック)」の初版を策定しました。 [注1]
この「危険物輸送に関する勧告」には、危険物を国際輸送する際のルールが包括的に定められています。危険物を安全に輸送するために、危険物の分類やクラス番号を定めたり、輸送用容器の要件を決めたりしています。また同じ危険物でも、海上輸送と航空輸送ではルールが異なる場合があるため注意が必要です。
[注1]危険物輸送に関する国際的な取り決め|国立国会図書館

国際海事機関(IMO)と国際民間航空機関(ICAO)


上記の通り、海上輸送と航空輸送では危険物輸送においてルールが異なる場合がありますが、ここではそうしたルールや規則を定める国連の専門機関について紹介します。

国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)

IMOは海上輸送のルールを定めた国連の専門機関です。船舶の安全及び船舶からの海洋汚染の防止等、海事問題に関する国際協力を促進するため、1958年に設立されました。[注2]

IMOが定める危険物の国際海上輸送における基本的な取り決めとして「1974年海上人命安全条約(SOLAS条約)」が挙げられます。なお、SOLAS条約では危険物輸送に関するルールだけでなく、船舶の構造や救命設備といった、船舶航行上の安全基準が包括的に定められており、今日のSOLAS条約の源流である「1914年SOLAS条約」の発行は1912年に発生したタイタニック号沈没事故が契機となりました。
[注2]国際海事機関(IMO)概要|外務省

国際民間航空機関(ICAO:International Civil Aviation Organization)

ICAOは航空輸送のルールを定めた国連の専門機関です。国際民間航空が安全かつ整然と発達するように、また、国際航空運送業務が機会均等主義に基づいて健全かつ経済的に運営されるように各国の協力を図ることを目的として,1944年に採択された国際民間航空条約(通称、シカゴ条約)に基づき設置されました。[注3]

危険物の国際航空輸送における基本的なルールは、「国際民間航空条約の第18付属書『危険物の航空安全輸送』」及びこれを補足する「危険物の航空安全輸送に係る技術指針」に定められており、当該条約締約国に対して法的拘束力を持ちます。
[注3]国際民間航空機関(ICAO)|外務省

危険物輸送のポイントは「クラス、国連番号」「包装」「マーキング、ラベリング」

これまで見てきたように、危険物を国際輸送する際には、国際ルールに則った対応が必要です。国連の「危険物輸送に関する勧告」では、「危険物輸送に関するモデル規則」として、危険物輸送の際に使用すべき「クラス、国連番号」「包装」「マーキング、ラベリング」などを定めています。

危険物を分類する「クラス」「国連番号」

危険物を輸送する際、輸送するモノの特性に応じた「包装」や、包装物の「マーキング」及び「ラベリング」が必要です。そのためまずは、輸送する危険物が何なのか、を表す体系的な分類やコードが求められます。

危険物の大きな分類として、「危険物クラス」があります。「危険物輸送に関する勧告」では、危険物のクラスが以下の通り定められています。

クラス番号 分類
Class 1 火薬類
Class 2 高圧ガス類
Class 3 引火性液体類
Class 4 可燃性物質類
Class 5 酸化性物質類
Class 6 毒物類
Class 7 放射性物質類
Class 8 腐食性物質
Class 9 その他の有害性物質

一見すると危険物ではない、と思えるような「隠れた危険物」もあるので注意が必要です。

隠れた危険物一例 危険物クラス
消火器 2:高圧ガス類
冷蔵庫 2:高圧ガス類
スプレー缶 2:高圧ガス類
水銀体温計 8:腐食性物質
リチウム電池が含まれた電子機器 9:その他の有害性物質

また、危険物を表すコードとして「国連番号」があります。国連番号は危険物ごとにふられた4桁の数字で、これをもとに必要な包装や積載方法などを知ることができます。

危険物の分類ごとに必要な「包装」

「危険物輸送に関する勧告」には、危険物(国連番号)ごとに求められる包装の基準が定められています。1包装あたりの重量や、容器の種類などを知ることができます。

包装物への「マーキング」「ラベリング」

危険物を輸送する際、分類に応じた包装が必要となりますが、外観から包装されているものがわかるように、「マーキング」及び「ラベリング」が必要です。

包装物の外装には国連番号やProper shipping name(※)、危険物クラスなどを明示しなければなりません。これを「マーキング」といいます。
(※海上輸送の場合は「正式品名」、航空輸送の場合は「正式輸送品目名」と訳されます)

また、輸送する危険物のクラスや特性に応じて、危険性ラベルや取り扱いラベルなどを貼付する必要があります。これを「ラベリング」といいます。

危険物輸送の基本的知識を身に付けて安全な国際輸送を

今回は危険物輸送の基本的知識について紹介しました。これまで見てきたように、危険物を安全に輸送するためには、守らなければならないたくさんの細かいルールがあるので、危険物輸送をする場合は専門の物流業者と協力して進めることが望ましいでしょう。

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