コンテナを用いた物流の仕組みは「20世紀最大の発明のひとつ」と言われています。コンテナという規格化された箱を輸送に使用したことで、安全かつ安定的、さらには高効率な輸送が可能となり、物流におけるさまざまな常識は大きく変わりました。
今回は、物流に革命を起こしたコンテナの歴史や種類、サイズなど、コンテナに関する基礎知識を解説していきます。
コンテナ導入により安全で安定的で高効率な輸送が可能になった
コンテナによる本格的な海上輸送の幕開けは、1956年アメリカのニューアーク港で始まります。[注1]
マルコム・マクリーンという陸運業者によって58個のコンテナからスタートしたコンテナ輸送は、やがて世界中のサプライチェーンに革命をもたらすことになります。
コンテナの登場は従来の海上輸送にあった以下の課題を解決しました。
・荷役時における貨物の盗難や輸送中のダメージが多い
・納期の定時性が保証されていない
・荷役や運送の効率が悪い
特に港での荷役においては、規格化されていない貨物の積み替えに大変多くの労働力が必要であったため、現在と比べてはるかに人件費と時間がかかっていましたが、コンテナ輸送の登場から3ヵ月後、荷役コストは約40分の1にまで激減したといわれています。[注1]
また、コンテナ輸送の導入は、港における荷役の高効率化をもたらしただけでなく、船による海上輸送と鉄道やトラックによる陸上輸送との連携をスムーズにし、生産から消費をシームレスにつなぐ一貫輸送を可能にしました。
こうして、貨物を「安全に 」「安定的に 」そして「高効率に 」輸送できるようになったことにより、世界の製造業や小売業のサプライチェーンはこれまで以上にグローバルに展開していくことになりました。
[注1]「国土交通」No.103(2010.6-2010.7)MLIT 歴史アーカイブス「コンテナリゼーションと港湾の役割」|国土交通省
コンテナの種類は一般的なタイプから温度管理できるタイプまで様々
物流に欠かせない存在となったコンテナですが、現在に至るまでに様々な種類が登場し、より多くのタイプの物資を輸送できるようになりました。
以下に主なコンテナの種類をご紹介します。
コンテナの種類 | 特徴 |
ドライコンテナ | ・一般的な海上コンテナ ・陸上では倉庫として使用可能 |
---|---|
リーファーコンテナ | ・冷蔵、冷凍など温度管理が可能 ・生鮮食品、生花、冷凍食品などの輸送に用いられる ・一時保管場所や倉庫としても使用可能 |
タンクコンテナ | ・タンク本体を枠で支えるコンテナ ・液体、ガス、化学薬品などの輸送に用いられる |
ベンチレーターコンテナ | ・通風孔のついたコンテナ |
オープントップコンテナ | ・天井部分が取り外しできるので、コンテナ上部からの荷役が可能 ・高さのある貨物の輸送に用いられる |
ペンコンテナ | ・動物を運ぶためのコンテナ ・通風、給餌、排泄に考慮された構造 |
コンテナのサイズは20フィートと40フィートが一般的
コンテナによる輸送システムをスムーズに運営するため、ISOにより寸法が規格化されています。
以下に最も一般的な20フィートと40フィートのドライコンテナのサイズを紹介します。[注2]
コンテナサイズ | 20フィート | 40フィート | 40フィートHigh Cube |
長さ(内寸) | 5,898mm | 12,032mm | 12,032mm |
---|---|---|---|
幅(内寸) | 2,350mm | 2,350mm | 2,350mm |
高さ(内寸) | 2,390mm | 2,390mm | 2,695mm |
内容量 | 33.1㎥ | 67.6㎥ | 76.2㎥ |
最大積荷重量 | 28,280kg | 26,740kg | 26,650kg |
この他、リーファーコンテナも20フィートと40フィートが標準的ですが、断熱材などが取り付けられているため、ドライコンテナと比較して内容量が若干小さくなります。
以下にリーファーコンテナのサイズを紹介します。[注2]
コンテナサイズ | 20フィート | 40フィートHigh Cube |
長さ(内寸) | 5,456mm | 11,590mm |
---|---|---|
幅(内寸) | 2,288mm | 2,284mm |
高さ(内寸) | 2,263mm | 2,544mm |
内容量 | 28.2㎥ | 67.5㎥ |
最大積荷重量 | 27,570kg | 29,480kg |
海上コンテナの2つの輸出方法
海上コンテナの輸出方法には「FCL」と「LCL」があります。
FCL(Full Container Load
Cargo)とは、一荷主の貨物のみでコンテナを占有する貸切便のことです。FCLでは、基本的に荷主や荷主から委託を受けた海貨業者が詰込み作業を行いますが、その後は輸送先に到着するまでコンテナを開けないため、紛失や破損の心配が少ないというメリットがあります。
一方、LCL(Less than Container Load
Cargo)とは、複数の荷主の貨物を1つのコンテナに詰める混載便のことです。LCLは着荷港で一旦コンテナを開けて荷物の仕分けをするため、輸送先の国や港によっては紛失や破損のリスクがありますが、単位輸送コストを荷主間で按分する形になるので、貨物量が少ない場合でも適切なコストで輸送が可能というメリットがあります。
コンテナ輸送がグローバル化に大きな影響を与えた
コンテナ輸送の登場から60年余りが経ちましたが、その間、人々の経済活動や消費活動はますますグローバル化してきました。グローバル化が加速した要因の一つとして、コンテナの導入、つまりコンテナリゼーションが挙げられます。コンテナ輸送の仕組みは現代のサプライチェーン構築において必要不可欠であり、私たちの暮らしを支える社会基盤といえるでしょう。