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EPA・FTAは関税や非関税障壁を
取り除き貿易を促進する

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EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)とは?
EPA・FTAによってもたらされる効果
EPA・FTAの利用状況における課題

EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)は締約国間の自由貿易を促進するための条約です。日本は多くの国とEPAやFTAを結び、経済連携を強化しています。
今回は、EPAとFTAの定義やその違いについて解説します。あわせて、これらの条約が物流や企業活動に与える影響を見ていきましょう。

EPA・FTAはともに締約国間の経済関係を強化するための条約

EPA・FTAはそれぞれ関税の撤廃や非関税障壁を取り除くことによって、締約国の間で経済連携を促進することを目的とした通商条約です。しかし、この2つの条約の間には違いもあります。外務省ではEPAとFTAを次のように定義しています。 [注1]

EPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)

“貿易の自由化に加え、投資、人の異動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定”

FTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)

“特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁などを削減・撤廃することを目的とする協定”

FTAは主に関税の撤廃など貿易の障壁となるものを取り除くための協定ですが、EPAは人の移動や知的財産の保護、投資、競争政策など、FTAよりも幅広い分野で協力関係を築くためのルールを定める協定となっています。FTAとEPAの大きな違いはここにあります。

もともと、貿易のルールは世界貿易機関(WTO)で加盟国の全会一致を原則として定められていました。しかし、先進国と途上国との利害調整が難航し、多国間での貿易自由化協議が長期化していたことを受け、二国間での取り決めであるFTAやEPAが主流となった経緯があります。

EPAはWTOの定めたルールよりも踏み込んだ内容を盛り込むことができ、日本企業の海外進出基盤を整えるなど、多くのメリットがあります。EPA・FTAのメリットを認識している企業への調査によると、企業が認識するメリットとして最も多く挙げられているのが、「相手国の関税撤廃における輸出競争力の強化」、次点で「日本の関税撤廃による調達コストの低減」となっており、コストの低減による競争力の強化に注目していることがわかります。 [注2]
[注1]経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA) | 外務省
[注2]経済産業省「通商白書2014」

EPA・FTAが与える効果とは?日欧EPAの効果はGDP1%の押し上げ

ここからは、EPA・FTAが与える影響の例として、日欧EPAについて見ていきましょう。
日本は2018年3月の時点で、20ヵ国との間で17の経済連携協定を署名・発効済みとなっており、他にも多くの国や地域共同体と交渉を進めています。2019年2月には、欧州連合とのEPAが発効されました。 [注3]

以下に、日欧EPAで具体的に取り決められた内容をいくつかピックアップしてみました。 [注4]

日本産品のEU市場へのアクセス

工業製品に関して100%の関税撤廃、現行税率10%の乗用車は8年目に撤廃、自動車部品は9割以上が即時撤廃、一般機械、化学工業製品、電気機器についても、約9割が即時撤廃。
農林水産品等に関して、牛肉、茶、水産物などの輸出重点品目を含め、ほぼ全品で関税撤廃。日本ワインの輸入規制の撤廃、酒類のすべての関税を即時撤廃、また農産品や種類の地理的表示(GI表示)の保護の確保。

EUから日本市場へのアクセス

化学工業製品、繊維・繊維製品などは即時撤廃。現行最高税率30%の皮革・履物も11年目又は16年目に撤廃。

サービス貿易・投資、ルール分野

サービス貿易や投資の分野では、原則すべてのサービス貿易・投資分野を自由化(例外措置あり)。知的財産分野で地理的表示(GI)の高いレベルでの相互保護等。

日本からの輸出に関しては、関税が撤廃された工業製品や自動車部品の輸出が拡大していくものと見られます。また、EUからの輸入では、繊維製品の関税が即時撤廃されたことで、例えばEUが誇るハイブランドの関税がなくなり、輸入が増える可能性があります。

内閣府が2017年に発表した日欧EPAの経済効果分析によると、日本のGDPは日欧EPAがない場合と比べて約1%、2016年のGDP換算で5兆円の押し上げになるとしています。 [注5]

このように、EPAは産業に大きな影響を与えます。物流の観点からいえば基本的に輸出・輸入ともに需給が増大し、倉庫等の物流施設の拡張や輸送機器の増強といった設備投資の増加につながっていくことが予想されます。
[注3]経済産業省「通商白書2018」
[注4]外務省「日EU・EPA概要」(平成31年2月1日)
[注5]内閣官房TPP等政府対策本部

EPAやFTAは大きなメリットを企業にもたらすが多くの企業で利用されていない

EPA・FTAを活用すると、企業は多くのメリットを享受できます。例えば、今まで10%の関税がかけられていた30億円の商品を輸出していた場合、関税が撤廃されれば、単純計算で3億円のコスト削減が見込めます。このように、コスト面でのメリットは非常に大きなものになります。

しかし、日本の多くの企業では、そもそもEPA・FTAの利用を検討するにあたっての情報が不足しているため、当該制度の利用に至っていないケースがあるようです。JETROの2013年の調査では、EPA・FTAの優遇措置を受けている企業は、50%に達していません。 [注6]

また、EPA・FTAの取り決めにより、原産地証明(GI)が必要となることもあります。輸出入の拡大やブランド価値の形成などの効果を見込めますが、新たに取得の手間が増えることもあるため、利用には専門家の知識を借りることが必要とされています。
[注6]経済産業省「通商白書2014」

EPAやFTAの利用は今後ますます重要に

現在、国内市場は少子高齢化の影響で縮小傾向にあり、海外に活路を見出す企業も少なくありません。このような状況のなか、企業の競争力強化に大きな影響を与えるEPAやFTAの利用は今後さらに重要性を増すと考えられます。一方、EPA・FTAの利用状況には課題が残されているので、基本的な知識を身につけ対応できるように準備を整えていくことが求められています。

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