三井倉庫グループ

AEO制度が目指す国際物流における
セキュリティ確保と貿易の円滑化

  • 国際輸送
  • 輸出入
  • 通関サービス

2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件以降、国際貿易におけるセキュリティの確保と円滑化が課題となる中、「貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者に対し、税関が承認・認定し、税関手続の緩和・簡素化策を提供する」AEO制度の重要性が増しています。[注1]
AEO制度は輸出入者、倉庫業者、通関業者など、対象者ごとに異なるメリットが設定されていますが、今回はそんなAEO制度に関する、対象者ごとの代表的なメリットについて紹介していきます。
[注1]AEO(Authorized Economic Operator)制度|税関 Japan Customs

AEO輸出者は保税地域を経由せずに貨物の輸出許可を受けられる

AEO輸出者(特定輸出者)の代表的なメリットは、保税地域を経由することなく貨物の輸出許可を受けられる点です。AEO輸出者は貨物を輸出する際の審査や通関手続きが緩和され、保税地域に貨物を搬入する工程が不要となり、迅速かつシームレスな一連の輸出業務を行えます。

一般的な輸出者の場合、輸出申告を行う際に貨物を保税地域あるいは税関が認めた他所蔵置許可場所に搬入して通関手続きを行わなくてはいけません。対してAEO輸出者は同フローが不要であるため、一般的な輸出者と比べてリードタイムや物流コストを削減できます。

AEO輸入者は納税申告を行う前に貨物を引き取ることができる

AEO輸入者(特例輸入者)は輸入申告と納税申告をそれぞれ別途で手続きすることが認められており、納税申告を行う前に貨物を引き取ることができます。

AEO承認を受けていない一般的な輸入者の場合は原則、輸入申告と同時に納税申告を行い、輸入許可を受けるためには関税を納付しなければいけません。一方でAEO輸入者は納税申告を後回しにできるため、外航船が本邦へ着く前に輸入申請を済ませて許可を得ることで貨物を迅速に引き取ることが可能です。これにより輸入貨物を引き取るたびに納税申告を行う事務作業負担を低減できる他、従来よりも輸送プロセスの効率化が見込めます。

AEO保税承認者は税関に届け出を行うことで保税蔵置場を設置できる

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AEO保税承認者(特定保税承認者)は税関に届け出を行うことで、自社の保税蔵置場あるいは保税工場を設置可能です。ただしAEO保税承認者となるためには、過去3年間で関税法に違反していないこと、3年以上継続して保税蔵置場の被許可者であることなどの承認要件があります。[注2]

AEO保税承認者は保税蔵置場・保税工場の設置に係る届け出の許可手数料が無料となるほか、帳簿の保存期間が一般的な保税承認者よりも短縮される優遇措置があります。さらに届け出を行った保税蔵置場は一般的な保税蔵置場よりも許可期間が2年延長されるため、手続きのリダクションを図ることが可能です。
[注2]AEO制度について|東京税関

AEO通関業者は貨物の輸出・輸入に係る緩和措置を受けられる

AEO通関業者(認定通関業者)は「特定委託輸出申告」および「特例委託輸入申告」の利用により、貨物の輸出・輸入に関わる緩和措置を受けられます。

輸出者の委託によって通関手続きを行う場合は特定委託輸出申告を利用することで、保税地域外に所在する貨物の輸出申告を行うことが可能です。一方で輸入者の委託によって通関手続きを行う場合、特例委託輸入申告によってAEO輸入者と同様に本邦で貨物を引き取った後に納税申告を行うことが認められます。そのため輸出者・輸入者から委託を受けて税関の手続きを行う通関業者は、これらの緩和措置によって委託元の輸出入に係るコストの削減、および利便性の向上を図ることができます。

AEO保税運送者は保税運送における発着地の届け出手続きが免除される

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AEO保税運送者(特定保税運送者)は保税運送における発着地の届け出手続きが免除されるため、事務作業およびコストの軽減といったメリットを有します。[注3]
[注3]国際運送事業者を対象としたAEO制度|国土交通省

AEO製造者は保税地域外で貨物の輸出申請を行える

AEO製造者(認定製造者)が製造した貨物を取得し、輸出する特定製造貨物輸出者は、認定製造者制度により、保税地域外で輸出申請を行って許可を得ることが認められています。

通関手続きにおいて貨物を保税地域に搬入して輸出申請を行う手間が不要となる他、特定の場所以外で貨物の輸出申告ができるようになることで、より効率的な一連の輸出業務を行うことが可能です。

AEO事業者の認定要件を確認してみましょう

これまで見てきたように、AEO制度の導入には貿易に係るリードタイムの短縮や物流コストの削減など、多くのメリットがあります。AEO事業者として承認を受けるためには、対象となる制度ごとに異なるポイントがありますので、AEO事業者となることを検討される場合は、財務省が公開しているチェックリストなどを参考にしてみてはいかがでしょうか。 [注4] [注5]
[注4]AEO事業者となるには(審査要領、チェックシート等)|税関 Japan Customs
[注5]AEO認定要件チェックリスト|税関 Japan Customs

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