公開日:2026年9月24日
はじめに
物流というと、「いくらで運べるか」「物流費をどこまで削減できるか」というコストの視点で語られることが少なくありません。
もちろん、物流コストを適正化することは重要です。
しかし、これからの物流を考えてみるとその視点だけでは不十分となってきています。今の物流は、企業競争力を左右する「価値創造の源泉」へと役割を大きく変えています。
労働力不足の深刻化、法改正(物流関連二法※注1、トラック適正化二法※注2、取適法※注3)、Eコマース拡大による小口配送の急増、災害発生や環境負荷低減、技術の進化など、取り巻く環境が年々変化している昨今、物流に求められる役割や価値も変わっています。
このような状況の中、本コラムでは、企業競争力を持つための物流における必要なアプローチを4つの観点から整理します。
アプローチ①データとテクノロジーの活用(物流DX)
マテハン機器・ロボットの導入
労働力不足や人件費の高騰を背景に、マテハン機器やロボティクスの導入による自動化や省人化の必要性は増しています。生産性向上やリードタイムの短縮、正確性の向上などを図り、コスト抑制やキャパシティを増やすことに有効です。マテハンやロボットの進化が早い中で、導入には最適な機器選定やインテグレーションが重要となります。
AIやIoTの活用
AIの進化スピードは従来のIT技術とは比較にならないほどの速さで加速しています。対話型生成AIアシスタントによる問い合わせ対応やデータ処理・分析による業務効率化、需要予測と計画化、画像解析による早期検知や見落とし防止など活用幅は急速に広がっています。
また、現場の状況をリアルタイムで可視化することや、貨物や製品状況を把握するニーズが高まり、IoTの活用による品質向上や業務効率向上の必要性も増してきています。動態管理や温度管理、マテハンの稼働状況による予防点検などによるリスク回避、製品の使用状況把握による消耗品供給など活用事例が増えてきています。
アプローチ②企業間連携による効率化
個社での改善活動やインフラの整備は限定的となり、今後供給力が不足していく中ではリスクにもなり得ます。サプライチェーン上での企業間連携や物流共同化による効率化は必要不可決な取り組みで、複数企業間での配送車両や倉庫スペース・労働力のシェアリングは、環境課題含めた社会課題の解決に影響できる可能性を持ちます。
アプローチ③レジリエンス
労働力不足や自然災害、地政学的要因など、物流をめぐる不確実性はかつてないほど高まっています。不測の事態にしなやかに対応して復旧する「レジリエンス(強靭性)」の構築が、企業の事業活動を維持するために必要不可欠になります。
アプローチ④顧客体験
配送状況の透明性、受け取り方法の柔軟性など、ECが普及した現在、物流のサービス力は商品価値と同等に顧客満足度を左右します。物流は顧客との最もリアルで重要なタッチポイントです。特に、スマートホームやIot家電普及、住宅設備機器のネット購入、高齢化など、配送設置や工事を伴う物流ニーズは高まり、「すぐに正しく使える状態で引き渡す(付加価値)」サービスの重要性は今後ますます高まります。
まとめ
「安く運ぶ」という守りの姿勢から、「物流システムを通じていかに新たな付加価値を生み出し、社会と共存するか」という攻めの姿勢へシフトすることが、これからのビジネスの生命線になります。
物流の本来の役割は、単にモノを安く運ぶことではなく、顧客との約束を確実に守り、製品の価値を現場で最大化することにあります。納期を守り、品質を揃え、変化に柔軟に対応できる体制を適切なテクノロジーや仕組みで可視化・構築することは、企業の競争力を底上げする確かな基盤となります。
補足:本文中の法令について
※注1物流関連二法:
「物資の流通の効率化に関する法律(旧:流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」および「貨物自動車運送事業法」
※注2 トラック適正化二法:
「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」および「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」
※注3 取適法:
「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」




