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物流とは何か?
物流の起源や役割、そして課題について紹介!

  • 保管・入出庫
  • 輸出入
  • トラック輸送
  • 環境
物流とは何か?
言葉の意味と日本における歴史
物流の領域・機能
物流とロジスティクスの違いは?
物流業界が抱える問題

物流とは何か?言葉の意味と日本における歴史

物流という言葉の意味、起源

物流は、「物的流通」の略で、「生産者から消費者に至るまでの商品の流れ」と定義されます(精選版 日本国語大辞典)。 「物的流通」の言葉の起源は、アメリカのマーケティング業界で使われていた専⾨⽤語「Physical Distribution」 (Physical=物的・物理的な、Distribution=流通)だといわれています。 ⽣産地から消費地まで物理的に移動させる「活動」について、効率的な管理を⾏うために主張された概念だそうです。

日本における物流の歴史

⽇本の物流は、旧石器時代の出土品からその原型をうかがい知ることができます。 黒曜石やアスファルトなど産地が限定される資源が日本列島各地で発見されていることから、何らかの「物流」が行われていたと考えられます。

飛鳥時代の政治改革「⼤化の改新」では、中央集権国家体制を強化するため七道と呼ばれる主要な道路が整備されます。 その道路に沿って人・馬を常備した駅を設置し、効率的に駅を伝わって往来する交通・情報伝達手段が導入されました。 平安時代~鎌倉時代には、商品を馬に乗せて輸送する馬借、年貢米などを海上で輸送・保管する問丸などが誕生しました。

江⼾時代になると徳川幕府の⼿により、軍事的・政治的理由から全国の街道の整備が本格化しました。 江戸の日本橋を起点に、東海道をはじめ、中山道、奥州街道、甲州街道、日光街道などが整備され、適当な間隔で「宿場」が設けられました。 また、年貢米を安全に安く運ぶため、河川や海上輸送が盛んになり、海上輸送ルートである「東廻り航路」や「⻄廻り航路」が開発されました。

明治時代の文明開化に伴って、旅客に限っては鉄道輸送が急速に発達したものの、貨物に関しては江戸時代から変わらず海上輸送が主だったといわれています。

第二次世界大戦後の1950年代も陸上輸送は未発達でしたが、1964年の東京オリンピックや1970年の大阪万博開催に伴い、日本の交通網が大きく整備されていくことになります。 当時の政府は物流先進国だったアメリカに視察団を送り、「Physical Distribution」(物的流通)という概念を持ち帰ります。 その後、高度成長期もあいまって国をあげての陸・海・空のインフラ整備が進み、日本の物流環境は著しく改善されました。

物流の領域・機能

物流の役割は実にさまざまです。物流の領域と機能について解説します。

物流はよく⼈間の⾎液の流れ(動脈・静脈)にたとえられます。


物流の5つの領域

物流は、大きく5つの領域に分けられます。

物流の5つの領域
調達物流 商品製造に⽋かせない原材料や部品を運ぶための物流。
流通業では最終商品の仕⼊れも調達物流にあたる。仕⼊先や取引先から仕⼊れるための物流と考えることができる。
⽣産物流 ⼯場内で発⽣する物流。
調達した原材料や部品や資材の管理から⼯場内での物流、製品の管理、梱包(包装)、倉庫への発送までを含む。
販売物流 完成した商品を工場から物流センターや⼩売店を介して消費者に運ぶための物流。
⼀般的な物流は「販売物流」を指す。
回収物流 不良品や売れ残りの商品を回収・再資源化するスキームの中での物流。
循環型社会の形成に向けて、回収物流はより重視されてきている。
消費者物流 引越しや宅配、トランクルームなど、⼀般消費者を対象とした物流。

上記の血液のたとえでいうと、「調達物流」、「⽣産物流」、「販売物流」は動脈物流、「回収物流」は静脈物流に分けられます。


物流の6つの機能

物流の機能は、大きく次の6つに分けられます。

物流の6つの機能
輸配送 商品を目的地まで運ぶ機能。
トラック、鉄道、航空機、船舶などの輸送手段を用いてある地点からほかの地点へ移動させること。
保管 商品を一定期間保管する機能。
品質や数量を適正に管理しながら、倉庫や物流センターで一定期間蔵置すること。
梱包(包装) 商品の価値や状態を維持するため、適切な材料、容器などに物品を収納する機能。
パッケージングともいう。
荷役 輸配送や保管のために商品を扱う機能。
倉庫や物流センター内での商品の積卸し、 積付け、運搬、ピッキング、仕分けなどの活動全般のこと。マテリアルハンドリングともいう。
流通加⼯ 商品に付加価値をつける機能。
流通過程の倉庫や物流センターなどでの商品の加工、組み立て、検品、箱詰めなどのことをいう。
情報処理 物流を効率的に管理するための機能。
物流情報システムを用いて、輸配送、保管、梱包(包装)、荷役、流通加工の各機能の情報を管理し、 効率化させたり、トラブル防止を図ったりする。

物流とロジスティクスの違いは?

物流と似た用語として「ロジスティクス」があります。同時に語られることの多いこれらの用語の違いを説明します。

物流とは、「生産者から消費者に至るまでの商品の流れ」である「物的流通」の略であり、「モノの流れ」を表します。 一方で、ロジスティクスは、「モノの流れ(物流)」をトータルで管理して、「最適化するための仕組みと」いわれています。 そのため、物流はロジスティクスの一部といえます。

ロジスティクスの語源は、ギリシャ語の「logistikos(λογιστικός)」(計算に関する・算術的な)に遡ります。もともとは兵站(へいたん)とも呼ばれ、 軍事用語として使われていました。 兵站は、戦争や軍事行動において、軍隊の適切な補給や物資の輸送、兵士の移動などを計画し、組織するための活動を指します。 これは戦場での勝利や作戦の成功において極めて重要な要素であり、軍隊が長期間にわたり機能し続けるために必要な資材や支援を必要なタイミングで提供する役割を果たします。 「ロジスティクス」はもともと軍事用語でしたが、現代では広範な意味で物流やサプライチェーンの管理を指す言葉として用いられています。


物流業界が抱える問題

物流業界が抱える問題として、「⼈材不⾜・トラックドライバーの⾼齢化」、「⻑時間労働」、「物流量の増加」があげられます。 少子高齢化や、異業種と比べ厳しいとされる労働環境による慢性的なトラックドライバー不足の中、EC市場の拡大により物流取扱い量が増加し、 トラックドライバーの長時間労働が常態化しています。さらに、最近よく耳にする「物流の2024年問題」は、物流業界のみならず社会全体に影響する可能性がある⼤きな問題です。

「物流の2024年問題」とは、働き⽅改⾰関連法によって、2024年4⽉1⽇以降、「⾃動⾞運転の業務」に対し、 年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで発⽣する諸問題の総称です。

トラックドライバーの労働時間の上限が制限されることで、長時間労働が常態化していたドライバーの労働環境が改善される一方で、 物流業界のみならず社会全体に様々な影響が生じることが予想されています。

ドライバーの労働時間が減少することで走行距離が短くなり、一日に運べる物量が減少します。 それにより、物流企業の収益の減少や、輸送コストが上昇することにより荷主が支払う運賃の増加が予想されます。 輸送能力不足や運賃増加により、商品の供給不足が起こる可能性があります。企業は適時に製造・販売ができなくなり、 店頭における品切れや生鮮食品の鮮度低下が発生し、宅配便は「翌日配送」・「時間指定」サービスが受けられなくなるかもしれません。

運ぶ商品の量を維持するためには、⼈材の採⽤や、労働環境・労働条件の改善による⼈材定着率の向上をはじめ、リードタイムの調整や輸配送形態の変更、 ITシステムの活⽤など適切な対策を考える必要があります。消費者としても、再配達を減らしまとめ買いをすることで、輸送回数を減らす努力が大切になります。[注1]

「2024年問題」の対応の一つとして、トラック中心の輸送手段を鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」があげられます。[注2] トラックで長距離輸送していた商品を、環境負荷がより低い鉄道や船舶などの大量輸送機関に切り替えることで、 ドライバーの労働時間が短くなるとともに、CO2排出量の減少にもつながります。

三井倉庫グループには、モーダルシフト対応の実績はもちろんのこと[注3]、物流を取り巻くリスクを解決するために、 深い知見と、物流に関する豊富なノウハウで、お客様のSupply-chain Sustainabilityの実現をご支援するサービス「三井倉庫SustainaLink」がございます。 ご興味のある方はぜひお問合せください!

[注1]知っていますか?物流の2024年問題|公益社団法人 全日本トラック協会
[注2]モーダルシフトとは何か。 環境に優しくドライバー不足も解決!|三井倉庫グループ
[注3]「令和4年度モーダルシフト最優良事業者賞(大賞)」を受賞|三井倉庫グループ


【参考】

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