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昭和61年 トランクルーム編

「非商品物流の推進と新たなブランド・アイデンティティの確立」

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<拡大する収納サービス市場> 

 矢野経済研究所の「レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム市場に関する調査結果2013」によれば、2012年度の国内収納サービスの市場規模は前年度比7.4%増の489.2億円となっており、2013年度は前年度比6.6%増の521.5億円と予測されていました。2011年3月11日に発生した東日本大震災の経験によって、貴重品や思い出の品などを自宅に保管しておくことで建物の倒壊や津波、火災などの被害でそれらを喪失してしまう不安が高まり、リスク分散としての国内収容サービスのニーズが2011年度以降さらに増大しています。
 国内収納サービスはトランクルーム、レンタル収納、コンテナ収納の3種類に分かれます。トランクルームとは倉庫事業者が荷物を預かるサービスを指し、国土交通省の標準トランクルームサービス約款に基づいて荷物の保証義務も定められています。一方でレンタル収納とコンテナ収納は、主に不動産業者による事業で、荷物を預ける場所を貸し出すサービスです。ビルや専用建物などの屋内に収納スペースを提供する場合をレンタル収納と呼び、屋外のコンテナや鋼製物置などを首脳スペースとして提供する場合をコンテナ収納と呼びます。2012年度の市場規模の内訳は、トランクルームは前年度比1.2%増の33.5億円、レンタル収納は前年度比2.8%増の206.1億円、コンテナ収納は対前年度比12.5%増の249.6億円となっています。

 

<トランクルームの出発点> 

 トランクルームとはいつから始まったサービスなのでしょうか?日本初のトランクルームは、三菱倉庫が1931(昭和6)年1月に設立した江戸橋倉庫に置かれたと言われています。当時、米国で流行していた家具倉庫をヒントに、貴重品である家具や家財、衣料品などの安全保管に着目し、トランク(trunk、行李)単位での寄託を想定して「トランクルーム」と名付け、開業当初は富裕層の絵画や歌舞伎役者の衣装などが保管されていました。
 三井倉庫も銀座松坂屋の地下室を借りて毛皮や骨董品などを保管するトランクルームを経営する計画を1941(昭和16)年11月に立てましたが、資材難により実現に至りませんでした。その後、1944(昭和19)年5月に日本倉庫統制株式会社に倉庫営業のすべてを供出したため、新規事業として東京都民の家財を福島県や山梨県への疎開させる「疎開家財保管」を手がけました。三井倉庫は長らく倉庫業と港湾運送業を主軸として営業を行っており、法人からの商品の寄託が主体でしたが、個人を対象として非商品を取り扱った出発点がこの疎開家財保管でした。
 三井倉庫は倉庫業の新分野としてトランクルームにも注目しており、竹中工務店が大手町に建設する東京貿易会館ビルの地下1階、2階を賃借して、1957(昭和32)年9月に「大手町トランクルーム」を開設しました。主な取扱貨物は衣類、毛皮、双眼鏡、ピアノ、美術品などでしたが、特に毛皮や皮コート類の入庫が増えて1968(昭和43)年頃から満庫状態になるほどで、箱崎五階建倉庫の一部を1969(昭和44年)年からトランクルームに転換することになりました。一方で、大手町トランクルームが入居するビルの建て替えに伴い、1983(昭和58)年9月に完成した大手町センタービルの地下4階の一部を賃借して、新「大手町トランクルーム」を開設しました。


昭和32年頃の大手町トランクルームの様子

 

<ビッグバッグというブランド> 

 1983年4月から三井倉庫流通部は「トランクルーム保管」「家財コンテナ保管」「引越運送取扱」の個別業務を非商品の物流として総合化するため、新しい事業体制づくりを目指すことになりました。同年6月には東京支店大手町トランクルーム事業所の一部に「引越相談室」を設置し、引越に伴う短期保管の家財の増加に対応した家財専用コンテナを開発しました。従来は主に法人を対象に商品の物流を担っていた三井倉庫が、主に個人を対象に非商品の物流を本格化する上で、新たなブランド・アイデンティティの確立が必要でした。そこで1986年5月に三井倉庫社内に流通部を中心としたプロジェクトチームを編成し、ブランド・アイデンティティの手法に基づいて、商品名や基本コンセプトを定めることになりました。その成果が、1986年11月に流通部から分離独立して発足した「ビッグバッグ事業部」です。ビッグバッグ(BIG BAG)のバッグには2つの意味があり、「物を入れる(HOLD):保管(BAGにしまう)」と「物を運ぶ(CARRY):運送(BAGに入れて持ち運ぶ)」という保管と運送の両方の意味を含んでいます。

 現在でも美術品・貴重品保管サービスのために美術品専用トランクルームを運営するなど、三井倉庫が提供する幅広いソリューション(解決策)の中には、トランクルームに代表される非商品物流が含まれています。その源流は戦前のトランクルーム運営計画や疎開家財保管から始まり、1980年代に非商品の保管と運送の意味を含む「ビッグバッグ」というブランドを打ち出すまでに発展しました。三井倉庫の事業が総合物流業務へと発展する歴史において、こうした非商品物流の推進も重要な役割を担っているのです。


 

 横浜市立大学 准教授 山藤竜太郎

2016.7.31

 

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